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Spline House
Mar. 2022
閑静な住宅地の外縁に位置した夫婦と子供のための住宅の計画である。敷地は高度経済成長期、大阪万博以降に開発された住宅地の端に位置し、これまでに一度も建物が建てられたことがない土地であった。西側には総合公園の森林が隣接しており、前面道路を挟んでもその緑を十分に感じることができる場所であるため、その緑と豊かな関係性を築くことが課題であった。
敷地は三角形状で斜辺側が森に向いていたため、2層のボリュームを敷地にL字型に配置し、中央の余白をテラスとすることで、どの場所からも森林と向き合えるようにした。また、敷地の高低差に合わせ1階のリビング・ダイニングにレベル差を設け、スキップフロア状となった各エリアを中央に配置した階段で繋ぎ、1階と2階のテラス同士も外部階段により接続することでひと繋がりの回遊性をもたせた。
この建物は木造ではあるが、その制約を感じさせない自由な建築にしたいと思った。一方で、L字型で大開口や吹抜けも存在する建築計画であるため、プランの中央に配置した心柱から長手方向に方杖を用いたキール梁を架けるのが構造的に合理的な解法の一つであった。そこでそのキール梁の方杖を、しなやかな弾性のあるスプライン曲線の板で覆うことで曲面の壁とすることにした。そして室内階段の周りだけでなく、テラスの塀や、屋外階段の手すり壁なども曲面の壁とすることで、動くたびにその壁の向こうの景色が滑らかに切り取られていくような、そんな自然な形を模索していった。また、壁は内部も外部も同じように目地の無いザラザラとした質感とすることで、中世の石造りの壁の傍らにそっと寄りかかるような、都市の中に佇む居心地の良さを現代の住宅の中に埋蔵することができるのではないかと考えた。
このようにして、この住宅が建つ場所を意識しながら建物に立体的な回遊性や曲面の壁によって多様な風景を作り出すことで、内部での関係性を超えて、周辺環境と一体となった有機的な関係性が生まれることを目指した。
■建築概要
所在地: 大阪府箕面市
設計: 伊庭野大輔+藤井亮介
用途: 専用住宅
敷地面積: 156.96m2
建築面積: 84.01m2
延床面積: 136.66m2
階数: 地上2階
構造: 木造
工期: 2020年7月〜2022年3月
設計: 建築 伊庭野大輔+藤井亮介(藤井亮介建築研究所)
構造 永井拓生/風間宏樹
カーテン クリエーションバウマン
施工: コハツ(衣川 隆博)
写真: 笹の倉舎 / 笹倉洋平 + 新建築社